空色野原

空の下 野原にねころんで つぶやく
No  163

黄金の庭

すばる文学賞受賞。『黄金の庭

黄金の庭1

つらつらと長い文章の区切りに初めはとまどうカモしれないけれど
後半そんなことも忘れて一気読みイケマス。

この話で一番魅力的だったのは“アーちゃん”の存在かもしれない。
もしかしたらそれが大テーマといったっていいくらい
私にはこの話の核に思えた。

“アーちゃん”はすべてのひとの中に住む。
なのに、見ないことにされたアーちゃんは
誰かが替わりに背負ってこの現実世界を掻き回す。

“アーちゃん”に対するOK感、
温かいまなざしとでもいうようなものが全編の底に流れ
それはこの大変な現実世界への愛情にも感じられ
この物語を魅力的な世界に築き上げた原動力のようにも思えた。

ならば“アーちゃん”はジツは希望の化身なのかもしれない。

もしもそれに気づけたら、それは現実に今ここで生きる小さくて大きなヒント。
住み難さ、生きにくさに小さな風穴を開ける
春の芽吹きの最初のひと芽ともなれるかもしれない。


いい物語とはそういったものだと思う。

かけはなれた世界のように見せかけて、ほんとは現実に直結してる。

ひとに希望をもって生きてほしいと意図してか、せざるとも

物語を語る人は、そのために憑かれたように紡ぐのだと思う。



黄金の庭2

最後に。
いろんなひとがいろんなところをピックアップしてくれるだろうから
私は何気なくて実は至極いいところを‥

珈琲のいい香りが部屋にみちる。庭からはいってくる日差しは飴色でその光をあびながらクロワッサンなど食べていると、失業中だとか不妊だとか、そういうことはどうでもいいや、というような気になってくるから不思議で、まあなるようにしかならないさ、と鷹揚な気分にもなり、けっきょくこの小さな世界で手にすることができることなんかほんのわずかで、その手にすることができることっていうのは、もしかしたら、雑草だらけの庭をながめながら珈琲を飲んで、昨日のことも明日のことも考えないこんな瞬間だけなのかもしれないな、なんてことを思っていた。

ひとってこういうことの実感と大望の、両輪がバランスいいんじゃ。
大望だけじゃ何かを置き忘れる。
肩に力を入れ過ぎてガチガチに突き進むと破綻が訪れる?カモ。

あ?もしかしてこれが“黄金の庭”か?なーんて。


希望の物語をありがとう
これからも楽しみにしています
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